The CITIZEN Automaticを完成に導いた男たち


現在のシチズンはエコ・ドライブやエコ・ドライブ電波時計を製作する時計メーカーという印象が強いと思います。しかし、あまり知られていないのですが、シチズンでは創立以来、数の増減はありますが、ずっと機械式時計を作り続けていたんですよ。実は、ずっと機械式と先端技術を駆使した機構を並行して作っているんですね。機械式ムーブメントの生産数では30年間で累計1億を超えていて、この数字は世界トップクラス。シチズンの知られざる一面というところでしょうか。
しかも、あらゆるパーツは自社生産されていて、もちろん“ひげぜんまい”も自社で生産しています。ひげぜんまいとは時計のパーツ製作において、もっとも難しい部分で、世界でも数社しか作れません。心臓部ともいえる部分を東京(田無)本社内で作っている、つまりMade in Tokyoのパーツなんです。しかも、パーツを作る旋盤や、切削をするための機械をも自社で製作が可能です。シチズンは製造技術、加工技術、組立技術をすべて自社で行なうことができる世界有数のマニュファクチュールのひとつですが、旋盤をはじめとしたパーツの加工機械や組立装置まで自前で作ることができる会社はシチズンだけではないでしょうか。
今回、新たに製作したCal.0910は『The CITIZEN』という高級時計に搭載されるわけですから、過去のムーブメントに少々の変更箇所を加えるような、生半可なアプローチではできません。とはいえ、担当するメンバーにとってはすべてが挑戦であり、すべてゼロからスタートしたといっても過言ではなかったし、各ポジションで努力しました。でも、メンバー各人の努力はもちろんですが、弊社には機械式時計に携わってこられた多くの諸先輩方がおられて、彼らの持っている知識や経験、技術をたくさん頂戴することで、Cal.0910が完成したんです。創立以来80年間、機械式時計を作り続けてきた実績がなければ『The CITIZEN Automatic』は3年という短期間で誕生させることは不可能だったでしょう。
弊社のエポックメイキングな出来事ですし、ここで生まれた製作技術を、次の世代に継承していくつもりです。