やがて独立時計師として本格的に活動を開始すべく、2004年にサルパネヴァ氏は故郷フィンランドに戻って工房を開設する。
「工房は、古いケーブル工場をリフォームしたもので、ヘルシンキ市内からトラム(路面電車)で2分ぐらい。その付近は現在、アーティストが集まるエリアになっているのです」
この工房をベースに時計作りを進めるサルパネヴァ氏。では一体、彼はどのような時計を作っているのか?
「私は時計師として15年のキャリアがありますが、3年前、シンプルなモデルを作りたいと思いました。それは、よりシンプルでエレガントで、古いデザインと新しいデザインを混合したようなもの。そこで立体的な顔を造形し、それをムーンフェイズに仕立てたのです。この顔は自分でデザインし、友人の彫金師が製作しています」
こうして誕生したのが「コロナ K3 ハーベストムーン(Korona K3 Harvest Moon)」であり、この顔を文字盤いっぱいに展開した異色作が「コロナ ムーンシャイン(KORONA MOONSHINE)」というわけだ。
「この時計ケースはドイツ製の非常に高品質なもの。そして、ムーブメントはスイス製。しかし、それ以外のダイアル、ムーンフェイズなどは、すべてフィンランド製で、私はフィンランドに存在する唯一の機械式時計メーカーです」
独特の感性で個性的な時計作りを進めるサルパネヴァ氏。彼が生み出した「サルパネヴァ」は、北欧生まれの異色ブランドとして、時計愛好家を魅了するに違いない。